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「送料値上げラッシュ」にEC事業者はどう対応する?配送コスト最適化の実践策

公開日:2026/3/18

また送料が上がる──。
ここ数年、毎年のように届くこのニュースに、そろそろ慣れてきた方も多いのではないでしょうか。
とはいえ「慣れた」と「対策できている」は別の話。この記事では、配送コストをどう最適化するか、実務レベルで使える打ち手を整理してみます。

なぜ送料は上がり続けるのか

まず背景を簡単に。「また値上げか」で片付けたくなる気持ちは分かりますが、構造を理解しておくと対策の筋が見えやすくなります。

2024年問題の"その後"

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制が適用されました。施行から2年が経ちましたが、影響は一時的なものではありません。何も対策を講じなければ、2030年度には34%の輸送力が不足する可能性があるとされています(国土交通省)。

つまり、ドライバーの確保にコストがかかり続ける構造は変わらない。値下げに戻るシナリオは、正直なところ想定しづらいです。

値上げの3つのドライバー

送料値上げの背景にあるのは主に3つの要因です。

1つ目が燃料費・資材費の上昇。ガソリン価格の高騰は配送コストに直結します。2つ目がドライバー不足と人件費の高騰。待遇改善は業界の喫緊の課題で、そのコストは運賃に転嫁されます。3つ目が先述の2024年問題。持続可能な配送網を維持するための投資が、価格に反映されている格好です。

宅配便の取扱個数は2024年度で約50億個。前年度から約2,400万個増加しています。荷物は増え、運べる人は減る。この構造的なミスマッチが解消されない限り、値上げ基調は続くと見るのが妥当です。

各社の動き

2025年10月にはヤマト運輸が個人向け宅急便の料金を改定しました。ただし興味深いことに、同一都道府県の発着分は実質値下げ。60サイズの東京発着で940円→790円と、競合のゆうパックより安い水準に。ヤマトの狙いは、割高な法人契約に偏った構成を見直し、個人客を取り込んで全体の単価を上げること。単純な「全面値上げ」ではなく、各社が戦略的に料金体系を再構成しているフェーズです。

佐川急便も飛脚宅配便の運賃改定を段階的に進めており、日本郵便もゆうパックの料金見直しを実施。大手3社とも「値上げ前提」で動いているのは共通しています。

EC事業者が取るべき5つの実践策

「値上げは仕方ない。で、どうする?」──ここからが本題です。

1. 複数キャリア戦略(マルチキャリア)

1社に依存している事業者は、まずここから。

サイズ・重量・配送先によって最安のキャリアは変わります。たとえば、60サイズ・東京→大阪で比較すると、ヤマトと佐川とゆうパックで数百円の差が出ることもある。年間出荷数が数万件規模なら、この差は無視できません。

具体的には、頻繁に出荷するサイズと配送ルートを洗い出し、サイズ×エリア別に最安キャリアをマッピングする。これだけで、何もしていなかった事業者は年間数十万円〜のコスト削減が見込めます。

ただし、手動での振り分けは現実的ではありません。OMS(受注管理システム)やWMS(倉庫管理システム)で自動振り分けできる環境を整えるのが前提です。

2. 梱包サイズの最適化

意外と盲点なのがここ。「とりあえず余裕のある箱に入れておこう」──これ、毎回ワンサイズ大きい料金を払っているのと同じです。

60サイズと80サイズの差額は、キャリアにもよりますが200〜400円程度。1日100件出荷する事業者なら、10%でもサイズダウンできれば月間で数万円の節約になります。

実践のポイントとしては、商品カテゴリ別に最適な梱包材をリスト化する、過剰な緩衝材の見直し(商品に合った保護方法の検討)、小型軽量の商品はメール便やネコポスなどの小型配送サービスを活用するといったアプローチが有効です。

3. 送料設定の見直し──「無料」の終わり?

「送料無料」は強力な購買促進ツールです。ある調査では、消費者の3分の2以上が送料無料を提供していない店舗からの購入を検討しないと回答しています。

一方で、配送コストが上がり続ける中、全品送料無料を維持するのは中小EC事業者にとって利益を圧迫する大きな要因です。

消費者庁も2023年末に「送料無料」表示について見解を公表し、「送料当社負担」や「◯◯円(送料込み)」といった表示への自主的な見直しを促しています。規制こそ見送られましたが、業界全体として「送料はタダではない」という認識の共有が進みつつあります。

現実的な選択肢としては以下のパターンがあります。

  • 条件付き送料無料: 「◯◯円以上で送料無料」は客単価向上にも効果的。閾値は自社の平均注文額の1.2〜1.5倍あたりに設定するのがセオリー
  • 送料込み価格への移行: 商品価格に送料を組み込む。見た目のシンプルさは維持できるが、価格競争力には影響する
  • 会員限定の送料優遇: ロイヤルティプログラムとの組み合わせでリピーター育成にもつながる
  • 期間限定の送料無料キャンペーン: 常時無料ではなく、セール時やキャンペーン時に絞る

大事なのは「送料無料をやめる」ではなく「送料無料の出し方を変える」という発想です。

4. 倉庫の分散配置

これは一定規模以上の事業者向けですが、効果は大きい。

配送料は「距離」に連動します。関東の倉庫から九州に送るのと、九州の倉庫から九州に送るのでは、当然コストが違う。出荷先の地域分布を分析し、拠点を複数持つことで配送料を構造的に下げられます。

自社倉庫を複数持つのはハードルが高いですが、3PLの活用やフルフィルメントサービスとの連携で実現可能です。OMS/WMSで在庫を一元管理しつつ、出荷先に最も近い倉庫から自動で出荷指示を出す──この仕組みがあれば、倉庫分散のオペレーション負荷も最小限に抑えられます。

5. 再配達の削減

再配達率は約10.2%(2024年10月、国土交通省)。10件に1件が再配達されている計算です。

再配達コストは直接的にはキャリア側の負担ですが、中長期的には運賃に転嫁されます。つまり、再配達を減らすことは業界全体のコスト抑制につながり、間接的にEC事業者の配送コスト上昇を緩和します。

EC事業者として取り組めることは、配送日時指定の精度向上(購入フロー内での明確な選択肢提示)、置き配・宅配ボックスへの対応推進、コンビニ受取や店舗受取の導入、出荷通知メールでの受取準備の呼びかけなど、多岐にわたります。

地味な取り組みですが、顧客満足度の向上にも直結するので、コスト削減以上の価値があります。

「コスト転嫁」の伝え方

配送コストが上がったとき、どこまで顧客に転嫁するか。これはコスト管理の話であると同時に、コミュニケーションの話でもあります。

値上げをそのまま送料に反映すると、カゴ落ち率が上がるリスクがある。かといって全額自社負担を続ければ利益が削れる。

ポイントは「透明性」です。なぜ送料が変わるのか、物流業界でどういう変化が起きているのか。それを顧客にきちんと伝える。「物流の持続可能性」という文脈で説明できれば、多くの消費者は理解してくれます。

「値上げです。すみません。」ではなく「配送品質を維持するための見直しです」という伝え方。この差は大きいですね。

まとめ

配送コストの上昇は、EC事業者にとって「受け入れるしかない外部環境」です。ただし、受け入れ方にはかなりの選択肢があります。

  • マルチキャリアで最安ルートを選ぶ
  • 梱包サイズを1つ下げる
  • 送料設定を「全品無料」から「条件付き」に見直す
  • 倉庫の分散配置で配送距離を短縮する
  • 再配達削減で業界全体のコストを下げる

どれも「魔法の一手」ではありませんが、組み合わせれば確実に効きます。

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